会社案内ができ、「尊敬される会社」、「強い会社」、「いい会社」へのルート作りが経営陣と社員の間で共有され、企業の社会的な使命が確認できたら、次はそれを企業メッセージにまとめて外部に伝えるための作業に移る。このとき注意したいのは、企業メッセージを伝えるためには、利用するメディアに合わせて作ることが必要だという点だ。
たとえば、広報やIRの専門職用には、プレスリリースやニュースリリースのほかに、会社案内やアニュアルレポート(年次報告書)、環境報告書、CSR報告書などがある。また、新聞社や経済誌、専門誌向けには長期短期の事業目標や設備投資、生産計画の概要、販売促進策、市場の予測などをまとめておくことも考えられる。こうしたツールは、記者発表会やマスコミからの取材、あるいは社長懇談会やアナリスト向け説明会などで使用するためのものだ。
雑誌や新聞で年間企画として繰り返される商品別シェア調査や、ブランド力調査、営業力調査などさまざまなテーマによる企業ランキングは社内外で大きな影響力を持つから、その対策は通年の作業となる。日本経営品質賞や消費者志向優良企業選定なども視野に入れておきたい。
営業やサービスの担当者も、企業メッセージを伝える重要な役割を果たす。ステークホルダーは、彼らが企業の社員としてどう振る舞っているかを見ているからだ。つまり、営業やサービス担当者が生き生きと仕事をしていれば、それがかけがえのない企業メッセージになるというわけだ。
一方、テレビや新聞などを通じて、不特定多数にアピールするのがコマーシャル・メッセージだ。商品広告やカタログは言うまでもなく、商品そのものの製造過程や使用している材料、デザイン、価格設定までもが、企業メッセージを伝えるためのメディアであると考えなくてはいけない。同時にサービスもメニューの多様性ばかりでなく、サービス品質までもが企業メッセージを伝えるメディアとなる。
役員社員の特技や趣味のデータベースも、雑誌やテレビの特番などの取材時に役立つことが多い。こう見てくると、企業メッセージは企業活動のすべての局面で発信されていると言えよう。
さらにきめ細かく見ていこう。企業メッセージをシナリオに沿って展開しようと考えたとき、まず必要になるのが、企業活動の基礎データだ。
上場企業の場合は、まず公開されているデータがどのくらいあるかを点検することをおすすめしたい。
開発・生産・販売といった基幹業務以外にも、企業情報はたくさんある。研究開発情報は、特許関連情報やビジネスモデルへの関心が高いため厳格に管理されるが、そのほかの企業活動一般の情報は管理がずさんではないだろうか。
たとえば、リクルート向けの採用情報、新人研修概要は公表するが、中堅・幹部教育は秘密にしたり、経理関連情報はIR関連だと過剰に公開するが、専門誌や業界紙には情報を絞ることが多い。情報システムの概要と新規計画などといった情報では、経理が公表する場合と、情報システムが話す場合では、担当部門ごとに情報の公開度も変わりやすいこともある。また最近では、物流システムや購買システムについて、グリーン調達やCSR調達といった経営方針がらみの視点で考える必要性も生まれている。これらの部門の活動や予算まで把握し、どこまでが公開できて、どこからが社外秘なのか、その基準を決める必要もある。
組織が大きくなってくると、企業同士の横のつながりによる情報提供や、学会/研究会での発表、あるいは専門誌の取材を受けて情報を公開するといったことが増えてくる。あるいは公的な要請により提供する情報も多いはずだ。
これらの活動は情報公開という管理基準を持ち、たとえば広報室が一定の基準に従って情報を管理していれば問題はないはずだ。しかし、現実的にはそこまで厳密に管理している企業は少ないのではないだろうか。
私が広報マネージャーを担当していた1990年代前半では、将来の企業情報のWeb化による公開をにらんで社内情報公開の一元化を目指し、公開情報の現状を調査したことがあった。各部門に公開情報を提出させてみたら、それはおどろくほど膨大な量になっていた。1つずつ見ればどうということのない断片情報であっても、まとめて見ると企業戦略が見えてきて、社外秘扱いしなくてはいけない情報もたくさんあったのだ。そこで公開データ集を紙ベースで作り、情報公開のガイドラインとするとともに基準を定め、役員はじめ関係者に配布した。
公開情報を絞り込んで、記者やアナリストに「企業の具体的な姿が見えない」と苦情を言われてはいけないが、公開がすぎると社内外に混乱を招くこともある。
話が横道にそれたが、社内情報を「尊敬される会社」、「強い会社」、「いい会社」の評価軸で整理し、それぞれどんな具体例、推進策があるかを点検し、それを企業メッセージとして纏め上げ、適切なツールを作る。それをメディアに載せ、発信する。
これがブランディングの作業なのだ。
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| 図1 公開情報を見直し、あらためて公開の可否を判断してみよう |