なぜ、企業はブランディングに熱心になったのだろうか。商品力に際立った差がなくなった市場では、ブランド価値が上昇すると商品の市場価値が高まって販売環境が好転し、業績が向上するメリットがあるからだ。業績が好転すれば財務内容もよくなるから、IRにも好都合だ。だから最近は、ブランド価値を高めることに熱心な会社が増えた。
ブランディングとは広報活動のひとつだから、企業活動の事実にもとづいた企業メッセージをターゲットに送ることが基本的な業務となる。
ブランディングをめざした企業メッセージの発信は、企業活動の実態やビジョン、事業戦略、仕事の進め方などの理解と共感を獲得する情報が中心となる。しかし現状は、実現の見込みのない架空の企業像を構築することがブランド構築だと考えている人が多い。地道な作業を積み重ねていかなければ、企業メッセージは効果的に届くことはない。
企業が発信するメッセージの送り手は、社長や広報担当者だけではない。もっとも影響力が高いメッセージは、企業活動そのものだ。
ブランド構築は、「こういう会社になって、社会からこう認知されたい」という具体的なビジョンと実現させるための戦略、実行する仕事の進め方を掲げることが最優先の課題となる。基本は創業の目的であり、経営理念だ。
具体的で明快な企業イメージを構築する際には、「こんな商品をこんな方法で造り、こんな売り方をする会社」といった企業像を明らかにしたい。 「あなたの会社は何をする会社ですか?」、「あなたの会社はどんな会社ですか?」そう問われて、あなたは即座に答えることができるだろうか。
答えることができた人は、その答があなたの会社の他の社員と同じかどうかを考えてみよう。このとき答がいくつもあるようなら、あなたの会社が顧客や取引先、ひいては社会に与える印象もバラバラのはずだ。つまり、明快な企業イメージができていないことになる。
「こんな」の部分にそれぞれ言葉を当てはめてみてほしい。
解答は、「こんな商品をこんな方法で造り、こんな売り方をする会社」だ。社員の解答が一定の方向に収斂している企業ほど、ブランドは確立されていることになる。
そのためにはまず、「創業の目的は何か」「経営資源は何か」「それを活用してどのようなビジネスを展開するか」「ビジネスを通じて社会とどのような関わりを持っていくのか」といった事業化の目的、さらに事業を持続させていくための経営の姿勢を明文化することが必要だ。そうすることで、社員の一人ひとりが統一された明確な自社の企業イメージを持つようになる。
これらは通常、企業理念として会社案内などに明文化されているはずだ。しかし中小企業の場合、企業理念を明文化しているところは少ない。
90年前後に流行したCI(コーポレート・アイデンティティ)活動は、企業の存在理由を明確にすることが目的だったはずだが、視覚的なロゴマークの制作などVI(ビジュアル・アイデンティティ)で終わった企業が多かった。
明確な目標を持たない会社の経営方針は、社長や経営幹部の思いつきで左右され,改訂される。この「朝令暮改」を抑制し、社員の仕事の進め方や行動に方向性と自信を与えるためにも、自社の経営理念とビジョンが重要になる。
会社案内や社内報などに規定された理念が社員の自信になり、顧客や取引先には安心感を与え、会社に明確な方向性が生まれて、独自のビジネススタイルが育つ。
会社案内を金融機関に提出する事業概要のカラー版だと思っていたらそれは間違いだ。会社案内で企業理念を明確にすることは、顧客や取引先、地域社会への約束となる。会社案内は、企業が社会に出て行く免許証のようなもので、ブランディングには欠かせない企業メッセージのもっとも大切なツールだと心得てほしい。
もう1つ、社員に対する約束を表明できるツールが社内報だ。社内コミュニケーションの充実を図るとともに、社員に対するメッセージを発信できるツールと考えてほしい。
約束は実行し、持続させなくてはならない。そこから、信頼感が芽生えていくからだ。
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| 図1 企業理念の4つのポイント |