昨今、ホワイトカラーエグゼンプションの問題などにより、被雇用者の就業形態に関心が高まっている。「残業代がでない」「定年年齢が延びる」など、うかうかしていると就業先の制度は次々変貌し、自分の身に襲いかかってくるかもしれないのだ。病気、けが、失業や老後に関わる労働保険や社会保険、自分の会社の制度をきちんと把握しておかなければ、自分の幸せを勝ち取ることはできない。“お仕事”にしか関心がないSEは危ないかも!?
今回は、企業の将来を決定づける問題、人事制度のについてお話します。周知のとおり、一昔まで日本の人事の特色として、年功序列、終身雇用、企業内組合があり、これらは人事の「3種の神器」と呼ばれてきました。しかし、バブル経済崩壊後は企業を取り巻く経営環境が大きく変貌し、年功序列制度に代わる制度として能力主義、成果主義賃金制度が導入されたのです。皆さんの会社にも既にこれらは導入されていると思いますが、しかし今度はこの成果主義制度も見直す考え方が、最近注目され出しています。
では、もとをただせば年功序列制度は、なぜ上手くいかなくなってしまったのでしょうか?
年功序列とは、歳を重ねれば重ねるほどスキルや業務知識が向上し、それに比例して会社に対する貢献度も大きくなるという仮定のもとに評価される制度です。つまり“年配の社員が高い給与をもらえる”仕組みというわけです。
ところが、急速にIT化が進み、長年培ったスキルや知識が一瞬にして役に立たないといった事象が起こり始めました。たとえば、年配の社員がそろばんや電卓を叩いて経理処理していたのが、汎用の経理ソフトを導入したら今までの何倍も迅速かつ正確な処理ができるようになってしまったというわけです。
会社側は、彼らを非生産的であると考え、1991年以降の景気の急速な悪化もあって、「リストラ」に取り組まざるを得なくなり、人事制度の見直しを図ったのです。
こうして大半の企業が年功型賃金と決別し、昨今上場企業の9割が導入している制度が、成果型賃金制度です。
この成果型賃金制度、いわゆる成果主義は、基本的には仕事で成果を上げた社員には昇給や昇格で報い、結果を出せなければ賃金は下がる場合もある制度です。しかし、せっかく年功序列より良いとされ、社員のモチベーションを上げるために取り入れられたこの制度が、今度はむしろもっと人事制度として落とし穴があるとされ、問題視され始めているのです。
ベストセラーになった“内側から見た富士通「成果主義」崩壊”(光文社)では、ITのリーディングカンパニーであった富士通が成果主義導入により、負け組に転落する様子を克明に述べています。なぜ日本の大企業の先陣を切って導入した成果主義がうまく機能しなかったのか?
簡単にいうと、成果主義はそもそも日本人になじまないシステムだということなのです。たとえば、自分の評価対象にならないことは一切やらない。ゴミが落ちていても拾わない、他の社員にかかってきた電話は出ない、取り次がないなど。協調性やチームワークといった本来日本人が得意とする和の精神が失われ、それぞれが自分勝手にバラバラに行動する、これでは会社はよくなるわけがありません。 偏った成果主義は、社員のモチベーションを上げるどころか、かえって下げる結果となってしまったのです。
現在、いろいろな人事コンサルタントが横文字のわかりにくい人事制度を推奨していますが、私は単純に「成果を上げられなかったけれども、“頑張った社員が損をしない”制度」を構築すればいいと考えています。つまり、社員の勤務態度や協調性、業務プロセスなど、成果数字や勤続年月に関わりのないものをより評価の対象にするのです。そうすれば年功序列や成果主義の偏りすぎた評価制度の歪みは改善され、会社は良い方向へと進むでしょう。
そしてここでさらに重要なことは、このような評価制度を取り入れるために、会社側は社員に対して従来よりも、より一層会社の経営方針を理解させる必要があることです。会社がどの方向に進んでいくのか、そのためには社員にどうなってもらいたいか、どのように行動してもらいたいか、これらを明確に伝えなければならないのです。社員にとっては、会社がどうしたいかが分からなければ、協調性も何もないからです。
会社経営は営利である以上、数字で評価することは必要不可欠です。しかし、数字至上主義が行き過ぎてしまい、また会社の方針があいまいであることで、社員がコンプライアンスを無視し、違法行為に走る不祥事の例は絶えません。
会社によって社風や伝統が異なり、評価基準も異なるでしょうが、その根幹となる「頑張った者が、きちんと報われる仕組み」と、「はっきりした会社の方向性を示す企業側の姿勢」こそが今の混迷した日本の人事制度を救うのです。
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