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| 志賀弘幸さん(38) 株式会社三菱総合研究所 ソリューション統括本部 製造・流通・サービスソリューショングループ |
異業種への未経験転職は容易ではない。転職成功自体が難しいうえに、入社後には仕事を1から覚えなくてはならないというハードルが待ち構えているからだ。その中で、志賀弘幸さん(38)は外資系石油会社の営業から、シンクタンクの三菱総合研究所のソリューション部門へ転職を果たした。現在はソリューション統括本部の製造・流通・サービスソリューショングループに所属し、クライアント企業の業務改革を行なうプロジェクトのリーダーとしてコンサルティング兼マネジメント役を務めている。未経験転職のリスクを越え、即戦力として結果を出すための仕事術を聞いた。
志賀さんは大学を卒業してから13年間、外資系石油会社の日本法人で営業と営業企画を担当。自社の石油製品を販売する代理店の決算書から販売実績を読み取り、新たな販売方法を提示したり、顧客の要望を吸い上げて業務改善を図ったりしていた。それが転職後は一転し、現在はクライアント企業の業務改善プロジェクトの立ち上げや、予算・業務進行などのマネジメントを行なうようになった。
転職から2年。すでに塗料メーカーの経理業務改善・経理ソフト導入プロジェクトでリーダーを務め、クライアントの決算早期化を実現するなどの成果も収めているという。志賀さんのように他業種からの転職で即戦力として活躍するには、「未経験者だから」と妥協しない強固なマインドが必要なようだ。
「30代半ばを過ぎての転職でしたが、前職場と今の職場が畑違いだと思ったことは一度もありません。転職前の仕事で、自社の提携クレジットカードを作るため、コンセプト考えて企画書を制作し、経理部などの内部調整をした後にクレジット会社や代理店と交渉したり、システム開発の進行管理や販促キャンペーンなどを行なったりもしました。こうした仕事の流れは、現在のプロジェクトマネジメント業務と、基本的には変わりません。これまでの営業職で培った『相手の要望を引き出し、こちらの提案を納得させる能力』は、そのまま現職に役立っています」
IT業界への就職は、未経験者には難しいと考えがちだ。ところが志賀さんは「異業種での経験が最大のスキル」と、13年におよぶ営業職キャリアに対し、あえて自信を持つように心がけたそうだ。転職サイトに登録後、スカウトメールが届いた企業のうち3社の面接を受けて2社の内定を得た。そのうちの1社である三菱総合研究所に採用されたのは2005月8月。就職活動を開始してからわずか4カ月というスピードだ。
「どんな業界への転職でも、職務経歴書や面接では前職の業務内容や得た経験、スキルを具体的に説明することが重要になります。私はプログラムを考えてシステムを構築する技術者としての能力よりも、工程管理やプロジェクトの全貌を見据えて全体をコントロールするマネジメント分野で力を発揮できると、自分のできることだけを無理をせずアピールしました。人事担当者に自分の能力を正確に知ってもらうことは、転職後に能力を最大限に生かせる部署に配属されるためにも大切なことです。転職において、このポイントを抑えておけば、たとえ未経験転職でも即戦力として力を発揮できる可能性が生まれると思います」
プロジェクトリーダーの仕事は、限られた時間で最大の効果を発揮するように予算と進行、人材などを管理していくことだ。志賀さんはチーム1人1人の作業を、WBS(Work Breakdown Structure)という手法でマネジメントしているそうだ。WBSとは、まずプロジェクトを細かい単位に分割した構成図を作り、そこへメンバー1人1人を割り振っていく。そして構成図に沿って項目ごとの進行を確認しながら、全体の作業を進めていくというものだ。こうすることで、計画どおりに進んでいなかった場合の原因がどこにあるのかが突き止めやすく、軌道修正も素早くできるそうだ。また、このWBSを効果的に機能させるためにも、メンバーとの細やかな「対話」は常に大切だとも加えた。
「WBSを十分に機能させるため、チームの全員にプロジェクトの完成図と導入後の効果を説明しています。たとえば『このシステムが導入されたら、今までの膨大なコストと時間を大幅に縮小できる』というように、完成図を具体的に話すように努めています。全体像と効果が見えると、作業に対する意識も変わってくると思います。また、私がチームのメンバーに対して気をつけているのは、彼らのステップアップにつながる仕事の仕方をアドバイスできるかどうか、ということです。今から取り組む仕事が本人にどのようなメリットがあるか──プロジェクト完遂後に得られる経験やスキルを示すこともあります。重要なのは、1人1人に具体的な目的を持って仕事をしてもらうことですね」
ただチームのメンバーに仕事の役割分担しているだけでは、結局個々の能力は伸びないだけでなく、そのプロジェクトリーダーの後に続く者は誰もいないであろう。クライアントとの対話はもちろんであるが、常にメンバーの性格や思考、要望を的確につかみ、不安や何を望んでいるのかを引き出きだすためにコミュニケーションを怠らず配慮していくことは、プロジェクトマネージャーとしての統率力には欠かせないのだ。
「プロジェクトを失敗させないためには、メンバーにプロジェクトの悩みなど背負い込ませないことです。チームで取り組むのだから、必ず誰かがフォローしてくれます。そして、このようにチーム性を維持することがプロジェクトリーダーの仕事の魅力でもあるのです」
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