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転職経験あり! 仕事人たちのストーリー

大企業からベンチャー企業へ転職
転職成功で得たもの、失ったもの

加藤義憲さん 株式会社オウケイウェイヴ 開発本部 本部長
加藤義憲さん
株式会社オウケイウェイヴ
開発本部 本部長

 情報交換サイト「OK Wave」の運営などを行なう株式会社オウケイウェイヴで、開発本部のリーダーを務める加藤義憲さん。同社に転職するにあたり、NTTという大企業から設立間もないベンチャー企業への転職というキャリアデザインとなったという。どの転職成功のなかにもメリット、デメリットは必ずあるもの。加藤さんに、どのようにして満足する転職ができたのかを聞いた。

加藤義憲さんの転職成功のポイント
・日頃から自分の意思を明確に伝えてきた
・イヤなことから逃げるのではなく、目標を達成するために転職したこと
・筋道の通った転職動機を語り、これまでの職場の人事担当者を説得した
企業を選んだポイント
これから取り組む仕事にビッグビジネスの可能性と社会的価値を感じたため

研究職を希望するも配属先は営業部
それでも仕事に積極的であり続けた

 大学で人工知能の研究をしていた加藤さんは、1996年に大学を卒業してNTT(再編前)に就職。潤沢な資金を擁するNTTの研究所で、人工知能の研究を追及しようと考えたからだ。ところが加藤さんが配属されたのは営業本部の開発部。ここで法人向けシステムの受託開発チームのエンジニアとして働くことになった。「いずれは研究所で働きたい」と希望していたが、次に配属されたのは営業支援ソフトのパッケージ商品を販売する部署だった。ここでの仕事は、企業が困っていることやソリューションで解決したいことをヒアリングして問題解決の後押しをするという、コンサルティングのような仕事だった。

「入社以来、人工知能の研究とはまったく違う内容の仕事をすることになってしましました。『こんなはずではなかったのに』という気持ちもありましたが、研究所へ異動する希望を抱いて目の前の仕事に全力で取り組みました。今いる場所で成果をあげなければ、希望部署への異動したい意向も受け入れてもらえないでしょうからね。資格に対しても積極的に行動し、データベーススペシャリスト(注1)やネットワークスペシャリスト(注2)などを取得しました」

注1:データベーススペシャリスト
データベースの構築と管理をする能力を認定する国家資格。2000年度で終了し、現在は同等の位置づけとして「情報処理技術者試験 テクニカルエンジニア(データベース/DB) が運用されている。

注2:ネットワークスペシャリスト
ネットワークの構築と運用をする能力を認定する国家資格。2000年度で終了し、現在は同等の位置づけとして「情報処理技術者試験 テクニカルエンジニア(ネットワーク/NW) が運用されている。

 その後、営業部署に配属されてルート営業を行なっていた加藤さんに、大きな転機が訪れる。設立したばかりのオウケイウェイヴに転職していた職場の先輩から、一緒に働かないかと声をかけられたのだ。加藤さんがNTTへ入社して4年目の2000年5月のことだった。

「とても馬が合う先輩で、彼がNTTに在職していた頃からお酒の席で『何か新しいビジネスを考えようよ』と語りあったものでした。それを覚えていて、僕を誘ってくれたのです。この誘いをいただいた当時の僕は、NTTでのルート営業はそれなりにおもしろい仕事だけれど、入社時からの希望とは随分ズレた仕事をしているというやるせなさを感じていました。その一方で研究職への憧れにも増して、新しいサービスの開発に興味を抱くようにもなっていました。そんなこともあって先輩の誘いを、やりたい仕事ができるチャンスかもしれないと思い始めたのです」

大企業からベンチャーへの転職!
その決定的理由とは

 加藤さんがオウケイウェイヴで最も魅力的に感じたのは、設立して間もない会社の土台となる仕事に携われることだった。当時、個人をつなぐコミュニティとして運営していたQ&Aシステムを、いずれ企業に提供してビッグビジネスにしていくという構想に惹かれたそうだ。またFAQサービスに、ビジネスだけでなく社会貢献にも発展する可能性があることも興味深かったという。とはいえ、大企業のNTTから設立したばかりのITベンチャーへの転職は不安要素がたくさんあるはず。加藤さんは安定した給与や社会的なステータスなどを手放すことに、迷いはなかったのだろうか。

「安定性や収入、ステータスなどよりも、どんな仕事ができる人生にするのかを僕は重要視していたので、特に迷いはありませんでした。それに大企業だからといって安心できる時代でもありませんしね。当時のオウケイウェイヴは小さなアパートで7~8人が作業しているような会社でしたが、大企業にはない自由な雰囲気があり、自分の目指すものが作れるかもしれないという希望に満ちていました。社長には『入社するかどうかはあなたの意思次第ですから、考えがまとまったら返事を下さい』と言われました。でも僕の気持ちはすでに転職に傾いていましたね」

 そこで加藤さんは、自分の転職に対する判断が正しいかどうかを確認するために、週末はオウケイウェイヴのシステムやモジュール作りを無償で手伝うことにした。新しいシステムや会社が成長する基盤を作ることはとても楽しく、ますます心が転職に傾いたという。この手伝いを1カ月ほど続けた加藤さんは、オウケイウェイヴへの転職を決意。受け入れ態勢はすでに整えられていたので、NTTに退職したい意向を伝えた。直属の部長や課長はすぐに納得してくれ、業務の引き継ぎもスムーズに進んだ。しかし、人事部の担当者が加藤さんを強く引き止めたそうだ。

「人事部は『開発部署を希望しているのなら異動してもいい』『あなたの育成にかかったコストを償却するだけの仕事をしていますか?』など、答えに窮することばかり投げかけてきました。まるで退社するための面接ですね、転職先の入社面接はなかったのに(笑)。結局、話し合いは半日も続きました。退職時に人事部を説得するには『もっとやりたい仕事がある』と真摯に伝えるのに加えて、転職がどれだけ自分にとってプラスになるのかを説いて納得させることが大切です。『今の仕事がイヤだから』『自分に向いていないから』といったネガティブな発言は絶対にしてはいけません。そういう後ろ向きな考え方では説得できませんし、なぜそう感じるのかと追い込まれるだけですよ」

転職先は夢ばかりではない
給料は下がり、さらなる長時間労働となったが……

 晴れてオウケイウェイヴに転職した加藤さんは、企業向けFAQシステムの初期バージョンのシステム開発に従事。とはいえ何もかもが順風満帆というわけではなかった。給料はNTT時代より15%も下がり、夜遅くまでかかる仕事が増えたので勤務時間は長くなった。また少人数の会社なので、クライアントのニーズをヒアリングしたり、クレーム処理をしたりと、1人で何でもこなさなくてはならなくなった。さらには前職でなじめなかった営業の仕事もすることに。自分の意見が通りやすい反面、苦手なことも避けられない環境で働くことになったのだ。

「転職してからの方が、キツイと思うことは増えましたね。それでも続けられたのは『自分が作った新サービスを広めたい』という目標があったからでしょう。転職をして初めて分かったのですが、前の職場から逃げるための転職は成功しません。転職で成功するには、前向きでポジティブな動機がないとダメですね。それから、やりたい仕事があるという気持ちを周囲の人に伝えること。その気持ちを聞いた人がチャンスを持ってきてくれることは、僕に限った話ではありません。そしてチャンスを逃さないこと。転職のお話をいただいた時点ではチャンスなのか判断するのは難しいことです。しかし、自分が仕事を通じて何を成し遂げたいのかを熟考すれば、ベストの判断ができるでしょう」

 加藤さんの転職の場合、前職に比べて給料が下がり、長時間労働などのいわば転職マイナスポイントがあったが、“自分の目指すことができる”という転職メリットにプライオリティが明確であったため、転職後に戸惑うこともなくその後のキャリア成功へと繋がったと言える。転職において、自分にとってのメリット、デメリットを整理するノウハウとして加藤さんのように、転職前の自分の業務をあえてネガティブに捉えることなく、冷静に自分の意志を明確化する判断材料とするとよいであろう。

現在の会社へ転職する際の活動スケジュール
2000年5月転職活動開始(先輩から誘われる)
下向き矢印
5月オウケイウェイヴを訪問(社長と話す)
下向き矢印
5月オウケイウェイブの仕事を手伝う
下向き矢印
6月中旬NTTに退職の意向を伝える
下向き矢印
7月上旬オウケイウェイヴに入社

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