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| 宮島壮洋さん(31) 株式会社カカクコム 「食べログ.com」技術責任者 |
国内最大手の価格比較サイト「価格.com」を運営する株式会社カカクコムで、「食べログ.com」の技術責任者として運営に携わる宮島壮洋さん(31)。大学院を中退してIT業界へ就職。その後、大手ポータルサイト運営会社を経て現在の会社に転職した。今や年間売上高1700億のその会社から、同29億2100万円と規模の小さいカカクコムへ転職したのはなぜか。
現在の会社へ転職する際の応募データ
| 応募した企業数 | 面接した企業 | 内定した企業 |
|---|---|---|
| 1社 | 1社 | 1社 |
大学で物理学を学んでいた宮島さんは、大学院へ進み素粒子物理学の実験などを行なっていたが、2001年10月から2003年2月まで大学院を休学。博士課程に進んでから研究分野の将来性などに疑問を抱くようになり、いったん「社会」という別の環境に出て自分を見つめ直そうと思ったのだ。社会勉強の一環として、宮島さんは米国公認会計士の試験勉強を開始。英語と会計を同時に学べる点に魅力を感じたからだ。また同時に、プログラミングスキルを生かし、Webプログラムのアルバイトも始めた。結局、復学した翌月の03年3月に大学院を中退。就職活動を開始してすぐに、業務系パッケージソフトのベンダーおよびコンサルティングを行なう会社に採用された。米国公認会計士試験の合格実績とプログラミングの経験を買われてのことだった。大学院、アルバイト、就職でまったく異なるカラーの業種を経験した宮島さんは、なぜIT業界に進んだのか。
「経験した仕事の中でWebプログラマが一番おもしろいと感じたんです。コンピュータ言語やプログラムの作成は、大学院で研究用の解析ソフトなどに打ち込んでいたので慣れていたのですが、Webプログラミングはアルバイトで初めて体験しました。このときにとてもやり甲斐を感じ、本格的にやってみたいという思いが強くなりました。最初に就職した業務系パッケージソフトの会社の方向性や内情に満足できなかったこともあり、入社して2カ月ほどで転職することにしました。行き先は大手ポータルサイト運営会社です。ここではオークション事業部に配属されて、オークションサイトの法人向けツールを作ることになりました」
国内のWeb関連企業の中では老舗ともいえる会社の、しかも人気コンテンツの1つである「オークションサイト」のプログラム担当者という、多くの人が憧れる職業に就いた宮島さん。ところが時間が経つにつれて、仕事に物足りなさを感じるようになっていったというのだ。
「この会社では事業部制を導入しているので、オークション担当である僕はオークションの開発しか行なえませんでした。1~2年も同じ部署にいると、大抵のことは分かるようになり、新たに技術を習得する機会が少なくなります。もともと、いろいろなことを経験したいと思っていたので、次第に仕事に対する興味が薄くなっていくのを感じました。また、大企業なので、企画は企画担当、システムは開発担当と分業体制が行き届いています。そのため、自社開発とはいえ、自分で考えて作ったサービスとはいいがたい状況になっていました。ですから、自分でサービスを一から立ち上げることができたら、おもしいだろうなと考えるようになりました」
宮島さんが働き始めて2年近く経ったころ、中学から大学まで一緒に学んでいた友人からある誘いを受ける。その友人は株式会社カカクコムで働いており、今度「食べログ.com」というサイトを立ち上げるので、一緒に取り組めるパートナーを探していたのだ。
「当時のカカクコムはメインサイトの『価格.com』の運用が最優先事項で、新規サイトの事業になかなか人員を回せず、企画はできていてもシステムを作る人間がいなかったのです。そうした状況なので、興味があったら一緒に働かないかということでした。当時の彼はWeb系の知識が少なかったので、2年ほどサイトのプログラミングの仕事をしていた僕の方が業界に明るいと見ていたようです。僕はかねてから考えていたサービスの立ち上げに関われるチャンスだと思いました」
自分のやりたい仕事ができそうだというのは魅力的だが、転職はテーブルを右から左へ移動するように簡単にはいかない。宮島さんにも不安はあったという。転職するということは、慣れ親しんだ仕事環境から離れることであり、これまで作り上げてきた実績があまり意味をなさなくなること、職場の雰囲気や人間関係など気がかりであったそうだ。
「前の職場の開発環境はオープンソース系でFreeBSD(PC/AT互換機用のUNIX互換OS)ベースだったのですが、カカクコムはガラッと変わってWindows系なので、技術面は再び一から勉強しなければならないなと思いました。興味のあることには何でも食らいつく性格ということもあって、気持ちはカカクコムに傾きました。でも、本当に転職することが正解なのだろうかという迷いもあり、誘ってくれたことへの返事ができないでいました。すると例の友人が、カカクコムの社長やCTO(Chief Technology Officer=最高技術責任者)と引き合わせるために、会食の席をセッティングしてくれたんです。そのとき社長が『一緒にやろうよ。新サービスの立ち上げに当たっては、やりたいことをやってくれたらいい』と言うのを聞いて、社員の提案にきちんと耳を傾ける人だなという印象を受けました。カカクコムの雰囲気や職場環境については、友人からも聞いてはいましたが、社長と実際に話すことができたことで『移ったのはいいけど実情は違うんじゃないか?』という心配は消えましたね」
カカクコム社長との会話が宮島さんの背中を押すことになり、同社への転職することを決意したという。
「転職しますよ」と言葉にするのは簡単だが、現在の職場を簡単に辞められるとは限らない。宮島さんは退職当時すでにベテランとして後進の指導にあたっていたそうだ。そうなるとなおさら簡単には退職できないものである。前職場から「今、辞められては困る」と慰留されたという。転職活動の難しさは転職先への就職だけでなく、円満に退職をすることにもある。宮島さんにとって、それは“抱えている職務をどのように果たして職場を去るか”ということにかかっていたそうだ。前職場の規定では、退職する意向を退職1カ月前までに伝えることになっていたが、抱えている仕事を整理してみると、とても1カ月では後任に引き継げないことが分かったのである。
「当時、僕はサーバの運用に携わっていたのですが、業務スケジュールが3カ月単位なので、途中で仕事から外れることが難しかったのです。また、エンジニアにはよくあることですが、自分しか内容が分からない仕事が多かったので、僕がいきなり抜けてしまうとサーバの面倒を見る人がいなくなってしまう状況でもありました。慢性的にエンジニアが不足している職場なので『もう一度考え直してくれ』とも言われました。引き継ぎをするため、僕しか分からない仕事を新しい担当者に教えるかたわら、業務以外の空いている時間はほとんど、抱えていた仕事をドキュメントとして残す作業に費やしました。それこそ休む暇はなかったですね。ですから退職するまでに結局、2カ月ほどの時間をいただきました。Webプログラマが転職を考えた場合、引き継ぎの下準備が一番大変だと感じました」
サーバ運用やプログラミングなどの仕事では、全体的なことは上司も把握しているが、細かいノウハウは現場の者にしか分からない。エンジニアが転職する場合、抱えていた業務に関する情報をすべて後任に受け渡す準備をしなければならない。ようやく前職場での仕事を整理した宮島さんは、カカクコムへの転職活動を開始した。とはいうものの、カカクコムには「紹介制度」というものがあり、同社の社員からの推薦があると入社試験などが省略される。特に宮島さんは推薦人が「食べログ」の責任者ということもあり、社長との会食の後は履歴書を提出し、そのまま役員面接という流れになった。
「履歴書にはアルバイト時代のことから、法人向けのオークションプログラムを手がけていた前職場時代まで、これまでのソフトウェア開発の経験をできるだけ詳しく書きました。また、米国公認会計士の資格取得や、簿記の勉強に取り組んでいた経緯をアピールしました。面接では『大手企業からの転職だが、なぜ規模の小さい会社に移りたいのか』という質問が出ました。そこで僕は『会社の規模の大小はあまり問題ではなく、自分のしたいことができることが大事であり、カカクコムという会社を知るにつれ、自分の希望を実現できる可能性が大きい職場だと感じた』と答えました」
こうして宮島さんはカカクコムへ転職を成功させた。その後、自分の手で作り上げた「食べログ」を月間100万人のユーザーのサイトにまで成長させ、年収は以前より5%ほどアップしたという。一大コンテンツとして自分もユーザーも楽しんできたが、今後は売り上げを伸ばすなど、ビジネスとして優れたものにするために次のステージに向かって闘志を燃やしている。
| 現在の会社へ転職する際の活動スケジュール | |
|---|---|
| 2005年3月 | 転職活動開始(転職の誘いをうける) |
| 4月 | 社長、CTOと会食 |
| 5月 | 役員面接 |
| 5月 | 前職場に退職願提出 |
| 5月~ | 前職場での業務整理 |
| 6月中旬 | 入社(正社員) |
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