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転職経験あり! 仕事人たちのストーリー

転職失敗は転職成功のもと!
IT業界未経験からWeb事業会社の役員へ

平松真穂さん(32) 株式会社ソナー Webインテグレーショングループ プロデューサー
平松真穂さん(32)
株式会社ソナー
Webインテグレーショングループ
プロデューサー

 不動産関係のITソリューション全般をサポートする株式会社ソナーで、役員としてWeb事業の責任者を務める平松真穂さん(32)。そもそも彼女は建築資材を扱う会社に入社し、工事現場にも足を運ぶ総合職として社会人の第一歩を踏み出した。それが、なぜ畑違いのIT業界に飛び込んだのか。役員にまでキャリアアップした転職成功の秘けつも含めて、聞いた。

平松真穂さんの転職成功のポイント
・興味のない(転職前の)業務の中からも自身の次につながる方向性を見い出せた
・転職失敗の経験を無駄にしなかった
「なんでもやります」という漠然とした業務姿勢は面接では通用しない、と学んだ
・転職成功後も目標実現のために、貪欲にスキルや知識を吸収した

転職活動の失敗経験で気づいた
具体的なビジョンとスキルの重要性

 大学在学中に遊びすぎて就職活動に出遅れたという平松さん。とにかく入れる会社を探して活動した結果、主にトンネルの建設資材を扱う資材会社に1996年4月に就職できた。同社で女性総合職第1号となった平松さんの仕事は、前任者がいない中で自分のすべき業務を探すことからはじまった。仕事を教えてくれる人がいない、現場では女性だからと相手にされない、会社での役割を果たそうにも果たせない……。この仕事を続ける意味を見出せずにいた。

 とはいえ、平松さんにも楽しく思える仕事もあった。図面入りの施工資料やパンフレットを作る仕事だ。お客に分かりやすくするためにデザインや工夫を凝らす作業に好奇心をかき立てられ、こうした仕事なら長く続けられそうだと思った。そんな彼女がWindows95のグラフィック・ソフトで作業していたある日、先輩社員から「グラフィックをやるならMacだね」と声をかけられた。何気ない一言だったが、それを聞いた平松さんは将来への展望が開けたという。

「それまで将来について模索してばかりでしたが、先輩の一言で『そうだ、デザイン関係の仕事に就こう。そのために、学校に通ってMacintoshを使えるようになろう』と具体的に考えられるようになりました。そこで週2回、会社帰りに専門学校のMac総合プロコースに通ってMacを基礎から学ぶことにしました。授業では、PhotoshopやIlustratorなどの使い方を覚えたほか、HTMLの書き方も勉強しました。その結果、Webのおもしろさを知り、Webデザインの仕事に就きたいと考えるようになったんです」

 Webに引きつけられた平松さんは、2年間勤めた資材会社を1998年3月に退職し、OJT(On the Job Training=実務を進めながら指導する職務トレーニング)をしてくれる中規模のWeb制作会社の入社試験を受けた。結果、2次試験の面接で不合格。面接で「何がやりたいか」と聞かれ、「何でも」と答えたことが敗因だったと考えた彼女は、具体的に何がやりたいのかを人に説明できなければダメだと反省。きちんと説明できるように、仕事への具体的なビジョンとスキルを身につけることを自分の課題とした。そこで平松さんは実務経験を積むために、決済サービスを扱う会社で自社サイトを制作するアルバイトを開始。負荷テストなどの動作チェックに携わった。この作業を8カ月ほど続けたが、次第に「もっといろいろな種類のWebサイトを一からすべて自分の力で作り上げてみたい。正社員として責任ある仕事をしたい」という気持ちが強くなり、Webサイト全般に携われる制作会社への転職活動を始めた。

目標に向かって貪欲に学ぶことで
一歩ずつキャリアアップしていく

 今度の転職活動で平松さんは、当時テスト版しかなかったFlashを用いた作品を持参して面接に臨んだ。まだ普及していない新しいソフトウェアにチャレンジすることで、挑戦意欲をアピールしたのだ。その甲斐あって、1999年1月に大手電器メーカーの製品紹介サイトを専門に手がけるWeb制作会社に正社員として入社。全社員がデザイナー3人とディレクターでもある社長の計4人という小規模な会社だが、平松さんは多くの人が利用するWebサイトを作ることに大きな喜びを感じた。

「高級感あふれる製品やかわいらしい製品など、さまざまなテイストの製品を紹介するWebサイトを制作するうちに、自分の引き出しが徐々に増えていきました。当時は仕事の合間に、世界中のWebサイトを見て回ってデザインの参考にしていました。このWeb制作会社で働きながら得たもっとも大きな収穫は、デザイン哲学を学べたこと。デザインとはコンセプトのあるもので、紹介する製品が持つストーリーをデザインに投影することが大切なのだと実感しました」

 そんな平松さんは、Web制作会社に入社して半年ほどたった頃、専門学校時代の友人に声をかけられた。フリーのWebデザイナーとして一緒に仕事をしようという誘いだった。平松さんの心は揺れた。正社員として責任ある仕事を任されていたが、ひとつのメーカーの製品サイトだけでなく、他のクライアントとも仕事をして経験を積みたい気持ちも大きかったからだ。そこで、彼女は会社に相談して雇用形態をアルバイトに変えてもらい、フリーランスのWebデザイナーとしての活動を開始。不動産会社や新聞社主催イベントなどさまざまなクライアントのWebサイトを制作するようになった。

「フリーランスという立場でWebサイトを制作するようになってからは、デザイン以外の仕事も請け負いました。クライアントとの打ち合わせから見積もり、制作、納品、ときには更新までに携わることになり、Webサイトを一からすべて作りたいという夢が実現したのでうれしかったですね。また、クライアントと直接やりとりする作業を繰り返すうちに、ディレクション能力を養うこともできたと思います」

 Webディレクターもこなすようになった平松さんは、大手不動産会社のWebサイトを制作している際に出会ったシステム開発会社の社長から、一緒に働こうと誘われた。不動産に特化したITソリューション全般をサポートする新事業を立ち上げたいので、Webディレクターとして手伝ってほしいというのだ。1999年当時の不動産業界は、手書きの図面をFAXで送受信して店頭に掲示するという“超アナログ”な環境だった。しかし平松さんは、不動産業にとって物件検索は必要不可欠なので、近い将来に必ずデジタル化されると判断。不動産業界になくてはならないシステムを生み出せるという期待感もあって、この話に乗ることにした。

これまでの問題点や課題を探す姿勢が
自身を成長させる糧となる

 こうして平松さんは、2000年にシステム開発会社内のIT事業部に入社。不動産物件のデータベースや検索システム、不動産会社のWebサイトを制作するほか、フリーランス時代のクライアントからの依頼も請けた。部署の要として活躍する彼女は、所属するIT事業部が2002年に株式会社ソナーとして独立した際、同社の役員に就任。そして現在、平松さんは同社のWeb事業を取りまとめるプロデューサーとして不動産検索システムのコンサルティングやWebサイトのディレクションを行ないつつ、役員として事業予算や社員のモチベーションなどの管理をしている。

「休日出勤や深夜残業なども多いけれど、クライアントやユーザー、社員がハッピーな顔をしているのを見ると、どんな苦労も吹き飛んでしまいますね。フリーランス時代は、一件いくらという形で仕事を請けていたため、極端に言えば自分のためだけにがんばればよかった。でも、今は多くの人が便利に感じたり喜んでくれたりすることがうれしくて仕事をしています。クライアントの要望や社員のモチベーションを含めて、自分が抱えているものが大きいほど仕事に熱が入ります」

 順風満帆の平松さんは現状に甘んじることなく、今なお自身の成長を心がけている。そんな彼女は、好奇心を抱いた技術や知識を誰よりも多く吸収しようと努力した結果、現在に至ったのではないかと、これまでの道のりを振り返る。そして、株式会社ソナーで面接官を務める立場から、次のように語る。

「面接では、自分がこの会社で何をやりたいかを、きちんと説明できるようにすることが大切です。それから、自分のスキルや知識をしっかり把握しておくこと。ただし、知ったかぶりは後々トラブルを生みかねないので避けましょう。また、Webディレクターはクライアントや制作スタッフとのコミュニケーションが不可欠なので、質問に的確に答えられるか、自分の考えを言葉で表現できるかなども見ています。そして最後に、仕事に対する姿勢ですね。これまでの自分を振り返り、与えられた仕事だけをやってきたのか、それとも自分で業務の問題点や課題を探しながら働いてきたのかを思い起こしてください。その上で、自分にどんな理想像があるのか、どう成長していきたいのかを、他者に伝えられるようにしましょう。そうすれば、きっと将来は開けるはずです」

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